当時僕は、何も知らない純真無垢な学生(18)だった。
活字媒体に苦手意識を持っていたので、今こそ苦手を克服しようと、本屋に足を運んだ。
読めればなんでも良かったので、目立つ場所にある陳列棚から本を選び、購入することにした。
陳列棚には星の王子様(サン=テグジュペリの童話)と極右本が並んでいた。
ここで言う極右とは政治思想の右翼という意味である。
なんでそんなナショナリズム的な本が、グローバルに読まれている童話と隣同士に並んでいたのかは知らないが、極右本はその内容らしからぬ、ゆるふわなタイトルと装丁で着飾っていた。
その外見は星の王子様の隣によく馴染んでいて、それらが並んで陳列されている事に違和感が無かった。
そして僕は陳列棚に並べられた二つの、その内容に天と地ほどの差がある本のどちらか一方を選んで購入することになる。
運命の選択である・・・
僕は騙された。
悩んだ末に、極右の方を手に取ってしまった。
カバンの中に国粋主義が入っているとは露知らず、僕は家に帰り、ゆるふわな装丁を開いて読み進めると
――隣国への批判が巧妙なメタファーを駆使してびっしりと書かれていた。
(ちゃんと全部読みました)