〈まず俺はビタミンD中毒になっていない。主題は誇張である。ビタミンD中毒はカルシウム濃度が高くなって危ない病気らしい。〉
俺は酸味の利いた飲料を好むので、水で希釈して飲む形式の黒酢飲料が販売されているという情報を目にした時、ついに玄関口の重い扉を開いた。
時は令和×年。現在が令和何年かを知らない俺を、天から降りし無数の紫外線が貫いた。
眩しく光る太陽光の灼熱が、雪原の如き純白の肌を痛めつけた。
俺の居住している賃貸は、誇張して言うと、日照権が侵害されているので、そこに籠る俺の肌は太陽光の受け入れ方を既に忘れていた。
栄養素ビタミンDとは無縁だった俺の体内に、ビタミンDが急造され、駆け巡る。
思えば今朝の関東地方に架かったらしい大きな虹は、天候がもたらす俺の身への影響を知らせる警鐘だったのかもしれない。
俺の体は耐え切れず、ついに発火し、灰となった。
猛暑の東京に吹く一陣の風。
その涼みの中に、俺の魂の一片が流動しているかもしれない。